AIエンジニアになるには?20代が今から始めるキャリア戦略

AIエンジニアは今、最も注目される成長職種のひとつです。

とはいえ、未経験から目指すには「どんなスキルをどう学ぶか」「どの環境で経験を積むか」を明確にする必要があります。

本コラムでは、AIエンジニアに必要なスキルセット、効果的な学習ステップ、そしてベンチャーでキャリアを伸ばすための戦略をわかりやすく紹介します。

AIエンジニアとは?仕事内容と役割をわかりやすく解説

AIエンジニアは、単にAIを開発する技術者ではなく、「AIを活用してビジネス課題を解決するプロフェッショナル」です。

データ収集からモデルの設計・実装・運用までを一貫して担い、AIが社会の中で機能する仕組みを作り出します。

ここでは、未経験者が理解すべきAIエンジニアの具体的な業務内容と役割を整理します。

1. データの収集・前処理|AIの基礎を支える最重要工程

AIエンジニアは、課題に合わせて必要なデータを収集し、欠損値補完・ノイズ除去・正規化などの前処理を行います。

AIは「データを学習して賢くなる」仕組みであり、性能はどのようなデータを与えるかで決まります。前処理の質がAIの成果を左右するため、最も重要なステップです。

たとえば、顧客行動データや画像データなどをAIが理解できる形式に整えることで、精度の高いモデル構築が可能になります。

実務ではデータの取得元や更新頻度も考慮し、将来的な学習や改善を見越したデータ基盤の設計力も問われます。

AI開発の“土台”を整える段階が疎かになると、後の工程すべてに影響が及ぶため、未経験者ほど丁寧に理解しておくことが重要です。

2. AIモデルの開発・学習|「考える頭脳」をつくる工程

AIエンジニアは、課題解決に最適なAIモデルを選定・構築します。

Pythonなどで機械学習・ディープラーニングのアルゴリズムを実装し、収集したデータをもとにAIを学習させます。画像認識ならCNN、文章処理ならRNNやTransformerなど、目的に応じた技術を選びます。

AIエンジニアは、学習済みモデルのチューニングやハイパーパラメータ調整、検証データによる精度確認なども担当します。
理論を理解するだけでなく、試行錯誤を通じてAIの挙動を把握する姿勢が欠かせません。

実務では、AIを「どう作るか」よりも「なぜこのモデルが適しているのか」を説明できる論理的思考力も求められます。

3. AIシステムの実装・開発|AIを実際のサービスに組み込む

学習したAIモデルを実際のアプリケーションに統合する役割もAIエンジニアにはあります。

たとえば、Webカメラに搭載する画像認識AIや、ECサイトのレコメンド機能、チャットボットなど、ビジネスでAIを動かす仕組みを構築します。

「実装」こそ、AIエンジニアが最も価値を発揮する部分であり、実務で求められるコアスキルです。

開発ではPythonだけでなく、API設計やWebフレームワーク(FlaskやFastAPIなど)の知識も重要になります。

AIが単体で動くだけではなく、他システムと連携し、安定してユーザーに価値を提供できる状態を作り上げることが求められます。

4. 運用・改善|AIを成長させ続ける仕組みづくり

AIエンジニアはシステムを監視し、精度や処理速度を維持しながら継続的に改善していく役割を担います。

AIは作って終わりではありません。精度が落ちれば再学習が必要ですし、データが変化すればモデルの改修も行います。

運用・改善に必要となるのが、「MLOps(エムエルオプス)」と呼ばれるAI運用の仕組みです。

MLOpsはチーム全体での自動化・再現性を重視する考え方であり、クラウド環境やDevOpsの知識も不可欠です。

継続的な学習体制を整えることで、AIが“成長する仕組み”を構築できるようになります。

AIエンジニアになるために必要なスキル・知識

AIエンジニアが習得すべきスキルを以下の3段階に分けて紹介し、未経験からの最短ルートを明確にします。

  • 基礎スキル
  • 応用スキル
  • 差別化スキル

AIエンジニアを目指す上で重要なことは、膨大に見えるスキル群を「どこから、どう習得するか」を正しく理解すること。

AI業界はすでに“二極化”が進み、平均層(年収500〜800万円)とトップ層(年収1000〜2000万円)の間には明確な差が生まれています。

より高収入のAIエンジニアを目指すなら、「学ぶ順番」と「実務で活かせるスキルの獲得」が欠かせません。

1. 基礎スキル

以下の基礎スキルは、未経験者が最初に習得すべきであり、AI開発に欠かせません。

スキルカテゴリ 具体的な技術・知識 必要になる理由
プログラミング Python AIライブラリ(scikit-learn, TensorFlow, PyTorch)を使いこなし、データ処理やモデル構築をコードで記述するため
データベース SQL(SELECT, JOINなど) データベースから学習に必要なデータを抽出し、加工するため
数学/統計学 線形代数、微分積分、確率統計 AIモデルの内部動作を理論的に理解し、モデルの評価や改善を行えるようにするため
ML/DLの理論 教師あり/なし学習、CNN、RNN 解決したい課題に対し、どのAI手法が最適かを判断できるようにするため

PythonはAI分野の共通言語であり、scikit-learnやTensorFlow、PyTorchなどのライブラリを扱えるようになることが目標です。線形代数や確率統計などの基礎数学を押さえることで、アルゴリズムの仕組みを理論的に理解できます。

学習は独学やオンライン講座(UdemyやCourseraなど)でも可能で、AIエンジニアとしての第一歩となるはずです。

基礎知識だけでもAIエンジニアとして転職は可能です。
応用・差別化スキルは、実務経験を積みながら、もしくは時間を見つけて挑戦しましょう。

2. 応用スキル|「平均層」から脱する実務スキル

基礎知識を身に着けたあとは、AIを“動かし続ける”ための応用力を身につける段階です。
以下の知識によって、年収1000万円以上を狙いましょう。

スキルカテゴリ 具体的な技術・知識 必要になる理由
MLOps(機械学習基盤の運用) コード管理・自動学習・再デプロイなどの仕組みを構築する技術 AIモデルを安定的にサービス運用し、改善を継続できる環境を整えるため
クラウド技術 AWS(SageMaker)、GCP(Vertex AI)、Azure(Machine Learning)など AIシステムをスケーラブルに構築・運用し、学習から実装までを効率化するため
AIを設計・提案する力 ビジネス課題の整理、AI活用の企画立案、提案資料作成 課題に対して「AIでどう解決できるか」を設計・提案し、エンジニアとしての市場価値を高めるため

3. 差別化スキル

ほかのAIエンジニアと差別化するのは、以下のようなAI技術や研究知識を実務に応用できるスキルが必要です。

AI開発の枠を超えて、企業のAI戦略をリードする立場に立つことも可能です。

20代未経験から“選ばれる”ための実践的4ステップ・ロードマップ

未経験者が段階的にスキルと実績を積み上げ、“選ばれる人材”になるためのロードマップを紹介します。

AIエンジニアを目指す20代未経験者にとって、最初の課題は「何から始め、どの順番で進めるか」を明確にすることです。

AI業界で成果を上げるには、闇雲に学ぶのではなく、戦略的にステップを踏むことが重要です。

STEP1:AIの基礎を“動かして学ぶ”

PythonやSQL、数学、機械学習理論といった基礎知識を実際に手を動かして身につけましょう。

たとえば、学んだPythonで簡単なデータ処理を試したり、scikit-learnを使って手元のCSVデータを分類してみたりといった実践的な練習が効果的です。

理論を暗記するよりも「自分のコードで結果を出す」経験を重ねることが、AI開発への理解を一気に深めます。

完璧を目指す必要はありません。教材や動画で基礎を学びつつ、「動かして理解する」ことを習慣化することで、AIエンジニアとしての第一歩を確実に踏み出せます。

STEP2:現職の強み×AIの「勝ち筋」を見つける

未経験者であっても、前職で培った業界・業務の知識こそが最大の差別化要素です。

たとえば、金融業界出身なら「不正検知AI」や「融資審査AI」、製造業なら「異常検知AI」や「需要予測AI」、医療業界なら「診断支援AI」など、自分が理解している業界課題をAIでどう解決できるかを考えます。

前職や現在の職場で得た知見を分析し、「AIで応用できる分野」を見つけましょう。転職先候補の選定やより専門性をもったAIエンジニアとして活躍できるスキル・知識を習得する際に必要となります。

ポートフォリオや職務経歴書にも反映すると、企業に「この人ならAI導入を現場目線で推進できる」と感じさせられます。

前職の経験をただ過去として切り捨てるのではなく、キャリアの中に眠る“AIの勝ち筋”を掘り起こすことが、このステップの本質です。

STEP3:「ポテンシャル」を証明するポートフォリオ作成

3つ目のステップでは、ポートフォリオを作成しましょう。

未経験者の転職では、企業が重視するのは「吸収力」と「学習意欲」です。
とはいえ、口頭で伝えるだけでは説得力がないので、自作のAIアプリやデータ分析成果物をまとめたポートフォリオが重要です。

Kaggleなどのデータ分析コンペに挑戦したり、自分の関心領域に基づいたAIプロジェクトを作成したりして、スキルを形にしましょう。

完成したコードはGitHubで公開し、学習過程や試行錯誤を技術ブログで発信すると効果的です。

実務経験がなくても、ポートフォリオがあれば実践経験がある点が採用担当者に伝わります。

STEP4:ポートフォリオを武器に転職活動を開始

ポートフォリオが完成したら、いよいよ転職活動の段階です。

「未経験歓迎」や「データアナリスト」など、AIエンジニアに近い職種から挑戦することも効果的です。
AIやIT分野に強い転職エージェントを活用し、自分のスキルとポートフォリオを客観的に評価してもらいましょう。

面接では、GitHubやブログを提示して学習の成果を見せることに加え、「前職で培った業界知識をAIにどう活かせるか」もアピールすることが重要です。

たとえば「製造業で培った工程改善の経験を、異常検知AIの開発に活かせる」「医療業界での業務理解をもとに診断支援AIの設計を提案できる」といった形で、AIスキルと業界経験の掛け算を具体的に説明できると、採用担当に“即戦力のポテンシャル人材”として強く印象づけられます。

とくにベンチャー企業では、技術力だけでなく「自ら課題を見つけ、提案できる視点」が高く評価されます。

学び・経験・提案を一貫して語れる人こそ、AIエンジニアとしての成長速度を加速させることができるのです。

AIエンジニアを目指す20代にはベンチャーがおすすめ

特に20代・未経験の挑戦者にとっては、以下の理由より、ベンチャー企業こそが最速で成長できる環境です。

  • 成長スピードが圧倒的に早い
  • MLOpsやクラウドなど、高年収スキルを最短で身につけられる
  • 自走力を磨ける
  • 20代ならポテンシャルが評価されやすい

AIエンジニアとしてキャリアを築く際、大手企業とベンチャー企業のどちらを選ぶかは大きな分岐点です。

▼大手とベンチャーの違いはこちら

成長スピードが圧倒的に早い

ベンチャー企業ではプロジェクトの始まりから終わりまでを小規模チームで回すため、データ収集・モデル構築・実装・運用といった全工程に関われることが大きな魅力です。

大手企業では業務が細分化され、AIエンジニアとして入社しても最初の数年間は一部分(例:データ前処理やテストなど)しか担当できないことがあります。

入社直後から「裁量を持って試行錯誤できる環境」で働けることが、成長スピードを何倍にも引き上げます。

若いうちから失敗も含めて多くの実践経験を積めることが、AIエンジニアとして市場価値を高める近道です。

MLOpsやクラウドなど、高年収スキルを身につけられる

ベンチャー企業では、プロジェクトの立ち上げから運用までを一貫して担当する機会が多いため、MLOpsやクラウド設計を肌感覚で学べる最高の環境といえます。

高年収層のAIエンジニアが共通して持つスキルである、「MLOps」と「クラウド運用スキル」。

座学よりも、実際にAIシステムをゼロから開発・運用し、トラブル対応や改善を繰り返して習得するほうが、より実践的なスキルや判断力を養えます。

短期間で「AIを作れる人」から「AIを動かせる人」へステップアップできることは、ベンチャーならではの強みです。

20代ならポテンシャルが評価されやすい

ベンチャー企業は、ポテンシャル採用が活発で、スキルよりも「どれだけ学び、挑戦できるか」を重視します。

30代以降になると実務経験やマネジメント力が求められるため、挑戦的なポジションに飛び込めるのは20代の今だけ

スピード感ある環境で、吸収力の高い時期に経験を積むことが、後のキャリアを大きく左右します。

ベンチャーで得た実践経験は、将来的に通用する成長資産になります。

AIエンジニア転職でキャリアを広げよう

AIエンジニアを目指すなら、基礎スキルを学ぶだけでなく、自分の経験をAIにどう活かせるかを考えることが重要です。

ポートフォリオで学習成果を形にし、面接では「前職の業界知識をAIで活かす提案」ができると強い印象を与えられます。

短期間で実務経験を積みたいなら、幅広い案件に携われるベンチャー企業がおすすめです。

当サイトではAI・DX領域の成長企業も紹介しています。挑戦できる環境で、AIエンジニアとして新たなキャリアを築きましょう。

スキルカテゴリ 具体的な技術・知識 必要になる理由
生成AI/LLM(大規模言語モデル) Transformer構造の理解、RAG(外部知識統合)、ファインチューニングなどの実装力 最先端のAI領域を扱うことで、グローバル市場でも需要の高い専門人材として活躍できるため
論文読解・実装力 arXivなどで公開される最新AI論文の内容理解と再現実装 研究レベルの技術を実務へ応用し、自ら新しいアルゴリズムや手法を生み出せるようにするため
英語力 技術文献読解、国際カンファレンス発表、海外エンジニアとの技術交流 最新のAI技術情報が英語で発信されるため、情報収集力と国際的な競争力を高めるため