ベンチャーとスタートアップの違いとは?スモールビジネスとも比較
スタートアップはベンチャーの一種ですが、だからと言ってすべてが共通している訳ではありません。
とくに、転職先としてどちらを選ぶべきか悩んでいる人は、ベンチャーとスタートアップの違いについて理解しておくべきでしょう。
そこで今回は、ベンチャーとスタートアップの違い、さらにスモールビジネスや中小企業との違いについて徹底解説していきます。
目次
「ベンチャー」と「スタートアップ」の基本
結論から言うと、スタートアップはベンチャーの一種ではあるものの、両者にはいくつかの明確な違いがあります。
「ベンチャー」と「スタートアップ」の違いを解説する前に、それぞれの基本について押さえておきましょう。
ここからは、以下の2項目に分けて解説していきます。
- ベンチャーとは?
- スタートアップとは?
ベンチャー企業とスタートアップ企業にはそれぞれどんな特徴があるのか、どのような会社が該当するのか、順番に解説していきます。
ベンチャーとは?
結論から言うと、ベンチャー企業(venture company)に世界基準の明確な定義はありません。
そもそもベンチャーとは、英語の「adventure(冒険)」を語源に作られた和製英語であり、日本では「冒険的な新ビジネスを開拓している成長段階の企業」の総称として使われるのが一般的です。
具体的には、以下のような特徴を備えています。
- 既存のビジネスモデルを新しいビジネスモデルに発展させている
- 創業年数が短い
- スモールビジネスをメイン事業にしている
ほとんどのベンチャー企業は、評価額(会社の価値)が低く従業員数が少ない、小規模または中規模の企業が占めています。
しかし、楽天やサイバーエージェントのように大企業へと成長を遂げたメガベンチャー企業も存在しているため、厳密には「評価額」や「従業員数」で判別することはできません。
なお、ベンチャー企業の特徴については以下の記事の後半でも詳しく解説しておりますので、あわせてご一読ください。
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スタートアップとは?
一方スタートアップ(startup)企業とは、アメリカのシリコンバレーで誕生した呼称で、革新的なアイデアで市場にイノベーションを起し、短期間で圧倒的な成長を遂げている「新興企業」のことです。
たとえば、世界的なスタートアップ企業として以下の会社が挙げられます。
- Amazon
- Meta
- Uber
ベンチャー企業と同じく、スタートアップ企業にも法的かつ明確な定義はないものの、以下のような特徴を備えているのが共通点です。
- ビジネスモデルにイノベーションを起こすほどの「革新性」がある
- 「大きな社会課題」を解決に導いている
- 圧倒的な成長力
- IPOやM&Aなどの「出口戦略」がある
有望なスタートアップ企業をお探しの方は、以下の記事を参考にしてください。
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「ベンチャー」と「スタートアップ」の違い
「ベンチャー」と「スタートアップ」の主な違いは、以下の4点です。
※左右にスライドしてご確認ください
ここからは、上記4つの違いについて個別に解説していきます。
革新性の違い
1つめの相違点は、ビジネスモデルにおける「革新性」の違いです。
ベンチャーは、すでに世の中に存在しているビジネスモデルに対して独自のアイデアや工夫を加えて進化させ、その延長戦上として新しいサービスを生み出したりビジネス領域を拡大したりすることで、イノベーションを起こしています。
たとえば、海外ではオンラインのDVDレンタルサービスを元に動画配信ビジネスを創出した「Netflix」、日本では通信業を元に多角的なビジネスへと発展を遂げた「ソフトバンク」などが、ベンチャーの成功事例です。
これに対し、スタートアップはこれまでの常識に捕らわれず、過去に事例のない新しいビジネスモデルを創出することで、イノベーションを起こしています。
たとえば、従来のタクシーの概念を良い意味で壊し、まったく新しいビジネスとして展開している「Uber」は、スタートアップの代表的な成功事例と言えるでしょう。
イノベーションとは、新しいテクノロジーや考え方などを取り入れて、これまで世の中に存在しなかった価値を創造することを指します。
つまり同じイノベーションでも、ベンチャーが既存のビジネスモデルをベースに発展させた「継続的イノベーション」なのに対し、スタートアップは従来の価値観を一度壊して0から生み出す「破壊的イノベーション」と表現できるのです。
成長率の違い
成長率の差も、ベンチャーとスタートアップの代表的な違いです。
以下のグラフで分かる通り、すでに存在しているビジネスモデルをベースにしているベンチャーは、事業をスタートさせた初期であってもある程度の収益が見込める反面、その成長率は時間をかけて緩やかに進んでいきます。
一方、0から新たなビジネスモデルを作り出しているスタートアップは、黒字化するまで時間がかかる反面、ひとたび起動に乗ると爆発的な急成長が見込めるのです。
上記グラフの通り、スタートアップはサービスの仕組みが完成して世の中に認知されるまで、ほとんど収益が望めない「死の谷(Valley of Death)」と呼ばれる状態を耐えなければなりません。
たとえAmazonのような世界的スタートアップであっても、設立から数年間は赤字が続くのが一般的です。
EXIT(出口)戦略の違い
3つめの相違点は、EXIT(出口戦略)に関する違いです。
EXIT(出口)とは、「出資者が企業に出資した資金を回収する」行為を指します。
FXや株式投資における「利確」のようなモノで、主な方法は以下の2つです。
- IPO(新規株式公開):証券取引所へ上場して外部に株式譲渡し、投資資金を回収する方法
- M&A(合併・買収):企業売却によって得た資金の中から、投資資金を回収する方法
ベンチャーは長期的にビジネスを拡大させていく傾向が強く、上場後も売却せずに同じ経営陣のまま経営を継続する企業がほとんどです。
そのため、以下のような特徴が見られます。
▼ベンチャーにおけるEXIT(出口)戦略の特徴
- EXITにたどり着くまでの時間が長い
- EXITの方法としてIPOを選ぶケースが多い
一方、スタートアップは起業の段階で「成功したらすぐに売却する」ことを想定しているケースが多いため、以下のような特徴が見られます。
▼スタートアップおけるEXIT(出口)戦略の特徴
- 短期間でのEXITを目指す傾向が強い
- EXITの方法としてM&Aを選ぶケースが多い
資金調達の難易度の違い
資金調達の難易度に差があるのも、ベンチャーとスタートアップの大きな違いです。
既存のビジネスモデルをベースにしているベンチャーには、初期段階から黒字化が見込めるという大きなアドバンテージがある分、信頼性の高いビジネスと言えます。
したがって金融機関からの融資が受けやすいうえ、助成金の条件をクリアしやすいため、資金調達のハードルはそう高くはありません。
これに対し、スタートアップはまだ世の中にない新しいビジネスモデルを創出するため、失敗するリスクの高さやほとんど収益が見込めない状態がネックとなり、金融機関からの融資が受けられるケースはごく希です。
融資の対象として信頼性が低いスタートアップが資金調達を行う場合は、将来的な成長に着目している以下のような投資家が有力候補となります。
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
スタートアップはベンチャー企業の一形態
和製英語であるベンチャーには明確な定義がないため、広義の解釈では「スタートアップ」もベンチャー企業の一種です。
ベンチャーとスタートアップの関係性を端的に表すと、以下のようになります。
ちなみに、英単語のベンチャー(venture)とはベンチャー企業ではなく、投資を行う「ベンチャーキャピタル」を指すのが一般的です。
スモールビジネスとスタートアップとの違い
ベンチャーは、大きくスモールビジネスとスタートアップとに分かれており、以下のような違いがあります。
※左右にスライドしてご確認ください
一覧表で比較してみると、スモールビジネスが前述したベンチャーとほぼ同じ特徴を持っているのが分かります。
また、スモールビジネスとスタートアップの最も大きな違いは、企業の成長戦略です。
実際に両者の成長曲線を比較してみると、スモールビジネスが緩やかながら着実に成長。
一方、スタートアップは起業当初の赤字期間を経て急速に成長する「Jカーブ」になっているのが分かります。
中小企業との違い
「資本金」と「社員数」という側面から見ると、ベンチャーやスタートアップは「中小企業」に含まれます。
ただし、視点を変えて比較してみると、中小企業・ベンチャー・スタートアップの3社に特徴的な違いがあるのも事実です。
ここからは、以下の2項目に分けて解説していきます。
- 中小企業とベンチャー企業の違い
- 中小企業とスタートアップの違い
中小企業とベンチャー企業の違い
中小企業とベンチャー企業の主な違いは、「働き方」と「求められる人材」の2点です。
※左右にスライドしてご確認ください
中小企業とスタートアップの違い
一方、中小企業とスタートアップの最大の違いは、リスクの程度です。
- 中小企業:拡張性が限定的なビジネスモデルが多い反面、確実かつ永続的な成長が見込めてリスクが低い
- スタートアップ:大成功する可能性を秘めている反面、中小企業よりはリスクが高い
スタートアップは、一定のリスクを背負ってでも世の中を変えるほどのイノベーションを起こしたい、仕事でワクワクしたいという野心的な人に向いています。
ベンチャー・スタートアップの現状
日本におけるベンチャーやスタートアップの現状は成長期に突入しており、この流れは今後も継続すると予想されています。
事実、コロナ禍でも次々と新しいベンチャーやスタートアップが起業しており、資金調達の総額・社数ともに増えているのです。
時価総額が1,000億円を超えるスタートアップ企業が増加傾向にあるのも、市場が活況を帯びている裏付けになっています。
その反面、AI・IoT・インターネットによるシームレス化・ドローンなど、日々進化する最新技術に対応できる人材が不足していることが大きな課題となっています。
ベンチャーやスタートアップへの転職を希望する人にとっては、売り手市場と言って良いでしょう。
ベンチャー・スタートアップで働くメリット
ベンチャー・やタートアップで働く主なメリットとして、以下の5点が挙げられます。
- 働き方の自由度が高い
- 規模が小さい分、大企業よりも幅広い分野の仕事に携われる
- 「やりがい」を実感しやすい
- 上司と部下の距離感が近く、新人でも意見しやすい
- 年齢・社歴・学歴に関係なく、実力で評価してもらえる
なお、ベンチャーやスタートアップならではの「やりがい」や「働くメリット」については、以下の記事で詳しく解説しております。
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ベンチャー・スタートアップで働くデメリット
一方、ベンチャーやスタートアップへの転職を検討する場合は、以下のようなデメリットがあることも把握しておきましょう。
- 少数精鋭なため仕事量が多く、ハードワークになりがち
- 新人でも一定の裁量権が与えられる分、責任も大きい
- 事業戦略や組織の体制が変化しやすく、対応力が求められる
- 大手に比べて社会的信用度が低い
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まとめ
ベンチャーとスタートアップの違いについて解説してきました。
最後に、本コラムの内容をまとめると以下の通りです。
- ベンチャーにもスタートアップにも、明確な定義はない
- ベンチャーとスタートアップは、革新性・成長率・出口戦略・資金調達の難易度が違う
- スタートアップはベンチャーの一形態
- ベンチャー企業には、スタートアップとスモールビジネスに分けられる
- ほとんどのベンチャーは中小企業に含まれる
- スタートアップを含むベンチャー企業は、今後も増加する見通し
スタートアップはベンチャーの中でも、とくに「やりがい」が強く感じられる貴重な存在です。
アイデアを具現化して世の中にイノベーションを巻き起こしたい人にとっては、まさに理想的な転職先と言えるでしょう。