地方創生ベンチャーを紹介!事業例や求められる人材も解説
地方創生とは、各地域が抱える様々な課題を洗い出し、独自の魅力や資源を活かした施策を行うことで、持続可能な発展を目指す取り組みです。
特に、地方創生に取り組むベンチャー企業は、その革新的なビジネスモデルやサービスによって大きな役割を果たしています。
本コラムでは、地方創生の概要から、地方創生を事業として行うベンチャー企業について詳しく解説します。
地域貢献に興味がある方や、地方創生ベンチャーにチャレンジしてみたい方は、ぜひ本コラムを参考にしてください。
目次
ベンチャー企業と地方創生
地域の経済や文化の活性化を目指す取り組みである地方創生において、ベンチャー企業は重要な存在です。
地方が抱える様々な課題に対して、ベンチャー企業によるチャレンジングな取り組みが新たな解決策を生み出し、持続可能な発展に貢献しています。
ここでは、地方創生の概要と、ベンチャー企業との関連性について解説します。
地方創生とは
地方創生とは、地方自治体や住民などの主体者と協力して、地域の経済活性化と持続可能な社会の形成を目指す取り組みです。
近年、日本では人口の減少や東京をはじめとする都市部への人口の一極集中、さらに高齢化など、様々な要因によって地方の過疎化が深刻化しています。
このような問題に対して、国や自治体だけでなく、企業が新しい事業やプロジェクトを実施することで良い影響を与える可能性があります。
例えば、企業による取り組みによって新たな雇用の創出や人口増加などの効果が期待され、社会の発展に貢献するなど、大きな役割を果たします。
『熱意ある地方創生ベンチャー連合』も創設
『熱意ある地方創生ベンチャー連合』は2015年に発足された連合団体です。
ベンチャー企業が持つイノベーティブなアイデアやソリューションによって地域の課題解決や地域事業の生産性の向上を目指しています。
自治体とベンチャー企業の架け橋となることで、関係者が一体となって活性化の実現を後押ししています。
発足当時は10社のベンチャー企業によって活動がスタートしましたが、現在は80社をこえる企業がメンバーとなり、積極的な活動を展開。
国や自治体、民間の事業者とベンチャー企業が一堂に集結する、「地方創生サミット」も年に1回開催しています。
お互いの垣根を越えた意見交換やアイデア提案を行うことで、より効果的かつ持続可能な取り組みが可能になります。
地方創生ベンチャーの意義
地方創生において、ベンチャー企業の役割は特に重要です。
革新的なアイデアによって、新たなビジネスモデルや技術の導入を積極的に行い急速に成長するベンチャー企業は、イノベーション性が求められる地方創生の取り組みに大きな影響を与えます。
以下では、地方創生ベンチャーの意義について具体的にご紹介します。
地域経済の活性化
地方創生ベンチャーがもたらす新しいビジネスモデルやテクノロジーの導入は、地域経済の活性化につながります。
例えば、ローカル産業の発展や新規事業が生み出されることで、地元企業や住民の経済活動が促進されます。
また、地域外からの観光客やビジネスの需要が増えることで、地域全体の経済成長に好影響を与えるきっかけにもなるでしょう。
さらに、近隣エリアとの連携を深めたり、その土地の新たな価値を生み出したりすることで、ブランディングが強化され、より持続的な成長が期待されます。
新たな雇用の創出
ベンチャー企業が地方創生に取り組むことで、新たな雇用が生まれます。
地方での雇用機会が増えることで、住民の安定した収入につながるだけでなく、地域外や都市部からの移住者も増えることが期待されます。
これにより、地方の人口減少と都市部の人口集中の問題を同時に解決できる点も大きなメリットといえるでしょう。
さらに、地方での働き方や生活の可能性を広げることで、多様なキャリアパスやライフスタイルの選択肢を提供できることも、地方創生ベンチャーの意義ある取り組みのひとつです。
地域資源の有効活用
地方には豊富な自然資源や地産食材、文化財など、様々な地域資源が存在します。
豊かな地域資源の魅力を引き出し有効活用することで、独自の発展を促すことが可能です。
例えば、その土地の魅力を活かしたアートプロジェクトや、地産食材を使用した商品、飲食店でのメニュー開発などが挙げられます。
地域資源の有効活用は、経済の活性化だけでなく、独自の特徴を生かした魅力ある街づくりにつながり、日本全体の活力に好影響を与えるきっかけにもなるでしょう。
地方創生ベンチャーで働く魅力
ここでは、地方創生ベンチャーで働く魅力をご紹介します。
- 社会貢献性が高い
- イノベーティブなアイデアを実現できる
- フレキシブルな働き方も可能
地方創生に貢献することは企業イメージアップといった企業側のメリットだけではありません。
働く社員にとっても大きな魅力があるので、順番に見ていきましょう。
社会貢献性が高い
地方創生ベンチャーでの仕事はその地域における課題を解決する役割を担うため、社会とのつながりが深く、社会貢献性が高いことが特徴です。
地域経済の活性化を通して社会に貢献することで、大きなやりがいを感じられるでしょう。
イノベーティブなアイデアを実現できる
ベンチャー企業が展開するイノベーティブなアイデアやビジネスは、地方創生の促進に貢献します。
一人ひとりの新しいアイデアや方法が求められる環境の中で、創造性を発揮できるのは地方創生ベンチャーの大きな魅力です。
フレキシブルな働き方も可能
郊外を拠点としてビジネスを展開するベンチャー企業で働く場合、地方移住が可能です。
自然豊かな環境での暮らしやアウトドアを楽しめるなど、新たなライフスタイルを実現したい人にとって魅力的なポイントといえるでしょう。
また、業種や企業の方針によってはリモートワークを導入している場合もあり、自分の好きな場所で働くなど、フレキシブルな選択肢があることも特徴です。
地方創生ベンチャーの事業例
地方創生ベンチャーの事業にはどのようなものがあるか、具体例を見ていきましょう。
以下の4つの分野における事業例をご紹介します。
- IT
- 不動産・住宅
- 観光
- 人材
IT
IT分野における地方創生ベンチャーには、様々な活躍の場があります。
ここ最近では、ITを活用した地方自治体のデジタル化や地元情報のオンライン化が急速に進められています。
この取り組みによって、住民や観光客に対して情報を効率的に発信し、利便性や地域の魅力を向上させています。
具体的には、オンラインでの住民票発行や各種手続き、現地で開催されるイベント情報の発信などもその一環です。
情報発信においては、WEBサイトやSNSなど、デジタルマーケティングを活用した特産品や観光地のプロモーションも積極的に行われており、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
農業が活発なエリアでは、IoT技術やAIを活用したスマートアグリカルチャーの取り組みが注目されています。
ドローンやセンサーなどを導入して農作物のモニタリングをしたり、ロボットトラクターを活用して農作業の自動化や簡略化をしたりすることが可能となります。
さらに、遠隔医療システムやオンライン教育サービスの展開などによって、住民のQOL向上に貢献する取り組みも進められているなど、数々の事業が存在するのが特徴です。
不動産・住宅
不動産・住宅の分野においても、地方創生を推進するベンチャー企業が活躍しています。
地方では空き家の急増が社会問題となっており、早急な解決が求められている状況です。
その中で、空き家をリノベーションし、移住希望者の住まいや観光客向けの宿泊施設として活用する事例が増加傾向です。
リノベーション事業だけでなく、移住希望者に対する不動産の紹介など一連のサービスを展開することで、より多くの人々の地方移住をスムーズに促し、地域の活性化に貢献する企業も存在します。
また、伝統的な建物や景観を保ち、有効活用することでその土地の魅力を高め、人口流出を防ぐと同時に観光客や移住希望者を増やす取り組みもあり、さらなる街の活性化を期待できるでしょう。
観光
観光分野では、地域の特性を生かした旅行プランの企画や、宿泊施設の運営などが行われています。
例えば、農業体験や伝統文化を体験できるワークショップなどです。
参加者は、日常とは異なる貴重な体験や、人々との交流を楽しめます。
参加者同士だけでなく、街の人々との交流も魅力のひとつでしょう。
また、地産食材を活用したレストランやカフェの運営を行うことで独自の魅力を引き出し、ローカル経済の活性化に貢献しています。
人材
地方では、労働力不足も深刻な問題です。
これを解決するために、現地の求人情報と求職者をマッチングさせる人材サービスを展開するベンチャー企業があります。
地域企業の求人情報に特化したプラットフォームの運営を通じて、地方での就職を希望する人と企業のマッチングをサポート。
また、地方での人材育成を支援する事業も行われています。
移住希望者に加え、地方の若者を始めとする住民を対象に研修プログラムやスキルアップの機会を提供し、地方でのキャリア形成を後押しする取り組みが行われています。
地方創生ベンチャーに求められる人材
地方創生でより高い成果を出すためには、様々なスキルが必要になります。
特に、地方創生に力を入れるベンチャー企業は、従来の企業にはない革新的な事業やサービスを展開しているため、事業に応じた様々なスキルが求められることも。
そこで、以下では地方創生ベンチャーに求められる人材について、必要なスキルや資質の例をご紹介します。
ITスキル
地方創生においてITの活用は非常に重要な役割を担います。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用することで、地元産業や文化の発展、自治体サービスの円滑化を図り、住民の生活の質を向上させたり、観光客の利便性を高めたりするなど様々な改革をもたらします。
そのため、高いITスキルを持つことで活躍の機会が増え、地方創生に貢献することができるでしょう。
具体的なITスキルとしては、WEBアプリケーション開発、クラウドサービス、データ分析など多岐にわたります。
ここ最近では、AI技術やメタバースを活用した地方創生の取り組みも注目されています。
ITは非常に幅広い分野であるため、基本的なITスキルを身に着けることはもちろん、自分の興味がある分野や、その土地の地方創生に必要とされる専門技術に基づいてスキルアップを目指すのがおすすめです。
コミュニケーションスキル
地方創生を円滑に進めるためには、住民や関係者との密なコミュニケーションが欠かせません。
地域の課題やニーズを正しく理解し、関係者との連携を深めるためには、高いコミュニケーションスキルが求められます。
そのため、地域ごとに異なる価値観を受け入れ、より良いアイデアを提案することが重要です。
コミュニケーションを行う上では、その土地の歴史や文化、慣習に関する知識や興味を深めることも役立つでしょう。
また、地方創生を成功させるためには長期的な計画が必要不可欠です。
継続的なコミュニケーションを通じてお互いの信頼関係を築き、地域に寄り添った取り組みを進めていくことが大切です。
チャレンジ精神
従来の枠を超えて、新しいアプローチや取り組みに挑戦するチャレンジ精神も大切です。
地域の課題を解決し活性化を目指すためには、既存の方法に捉われることなく、イノベーティブなアイデアや新しいテクノロジーを積極的に導入し、新たな価値を創造することが求められます。
チャレンジングな姿勢で積極的に行動することで、スピード感を持って成果を上げることができるでしょう。
しかし、プロジェクトの過程ではスケジュールがうまく進まなかったり、予期せぬトラブルが発生したりすることもあります。
困難な状況でも物事を前向きに捉えて改善を重ねることで、継続的な成果につなげられます。
柔軟な思考力
柔軟な思考力は、地域が抱える様々な課題に対応するために重要なスキルのひとつです。
課題やニーズはその地域ごとに異なるだけでなく、状況や環境の変化によって常に変化しています。
そのような中で、事業やプロジェクトの計画をフレキシブルに調整しながら、より良い方向に導いていくスキルが求められるでしょう。
また、取り組みを進める過程では、住民や自治体、地元企業など、様々な人との関わりが必要とされます。
異なる立場や考えに対して、お互いの意見を受け入れながら最適な方法を見出していくことが大切です。
地方創生ベンチャー7選
ここでは、地方創生に取り組むベンチャー企業を7社ご紹介します。
株式会社さとゆめ
株式会社さとゆめは、全国各地の地域づくりを支援するコンサルティング会社です。
「ふるさとの夢をかたちに」というミッションを掲げ、地域で生活する人々の夢や想い、そして課題をもとに、商品やサービスなど具体的な形として地方創生を支援する事業を展開しています。
例えば、JR東日本との共同事業である「沿線まるごとホテル」というプロジェクトが行われています。
これは、無人駅の駅舎をフロントとして改修したり、沿線に点在する空き家を宿泊施設として活用したりすることで、エリア全体をホテルに見立てたサービスを作り出すことを目指しています。
住民もキャストとして運営に携わることで、雇用の創出にも寄与していることが特徴。
このように、地域とのつながりを大切にした判走型のコンサルティングを実現することで、長期的な信頼関係を築き、持続可能な事業づくりをサポートしています。
リノべる株式会社
リノベる株式会社は、中古マンションや戸建て住宅のリノベーションを手掛ける企業です。
地方で深刻化している空き家や築年数が古い物件の増加に対して、リノベーションによる不動産再生を行い、課題の解決に貢献しています。
物件探しからリノベーションの計画、施工に至るまでワンストップのサポートを展開することで、スムーズなプロセスを実現していることも特徴。
リノベる株式会社は「熱意ある地方創生ベンチャー連合」の発足企業でもあり、発足当時から一貫して、循環型社会の実現を目指した事業に取り組んでいます。
Kotozna株式会社
Kotozna株式会社は、最先端の技術を活用した多言語同時翻訳チャットツール「Kotoyna Chat」を始めとする、コミュニケーションツールを提供する企業。
地方経済の活性化のポイントにもなるインバウンド観光に注目し、観光客と地域の人々が母国語でコミュニケーションが取れる体制をサポートしています。
地域の宿泊施設や地方自治体の観光局に対する、生成AIを活用したチャットボットや多言語タクシー配車システムを提供することによって、業務の効率化と、両者のコミュニケーションの円滑化に大きな影響を与えています。
株式会社おてつたび
株式会社おてつたびは、地方に興味がある人と、人手不足で悩む農家や宿泊施設などをマッチングするサービスを提供している企業です。
社名の「おてつたび」は、「お手伝い」と「旅」を組み合わせた造語で、旅先のエリアで仕事を手伝うことで報酬を得られるシステム。
旅行者は、地域に貢献しながらリーズナブルに旅行を楽しめると同時に、人手不足で困っている市町村の問題解決にも貢献しています。
また、現地での交流を通じてさらに興味を深める旅行者も少なくないようで、その後も地域のファンとなって再訪や移住するなど、持続的な活性化につながっています。
株式会社地域ブランディング研究所
株式会社地域ブランディング研究所は、総合的な街づくりをサポートし、持続的な貢献を目指す企業です。
メインビジネスである地域ブランディング事業をはじめ、インバウンド事業、イノベーション人材事業の3つの柱で事業を展開しています。
その土地ならではの資源や魅力のポテンシャルを見極め、最適な戦略立案と施策のサポートを行うことで、他の地域との差別化を図っている点も強み。
具体的な事例としては、金属加工品の産地である新潟・燕三条の工場見学ツアーや、長野県・白樺湖エリアの自然資源を活用した体験型観光コンテンツのサポートなどがあります。
また、株式会社地域ブランディング研究所は「熱意ある地方創生ベンチャー連合」のメンバーでもあり、数々の実績を上げ、飛躍的な成長を続ける企業のひとつです。
TradFit株式会社
TradFit株式会社は、音声テクノロジー、クラウドAI、IoTなどの技術を活用した音声データプラットフォームの構築及び運営を行う企業です。
これから成長が期待されるベンチャー企業100社限定のサイトである「ベストベンチャー100」に、3年連続で選出される実績を上げるなど、業界から注目を集めています。
国内外の協業パートナーや行政との連携を図りながら、観光や宿泊業界に特化したDX戦略に取り組み、各地域の地方創生を推進しています。
最新のテクノロジーを導入することで、地方企業の業務効率化と、ターゲットの満足度向上を同時に実現するなど、イノベーションを起こしている企業といえるでしょう。
さらに、事業を通じて地域の活性化に貢献するだけでなく、地域と世界をつなぐことでグローバルに社会課題の解決を目指すなど、今後の活躍も期待されます。
株式会社クラダシ
株式会社クラダシは、日本のフードロス削減を目指して、社会貢献型ショッピングサイト「Kuradashi」を運営しています。
賞味期限が迫った食品や季節限定の商品、パッケージの汚れやキズ、自然災害による被害などによって一般ルートでの販売が困難な商品を買い取り、自社のショッピングサイトや常設店舗、POP UP SHOPなどで販売を行っています。
売り上げの一部で様々な社会貢献活動のサポートも行っているのも特徴。
地方の農家と学生をつなぐインターンシップの開催や、フードロス課題に関する特別授業を提供するなど、食品ロスや各地の課題について考える機会を提供しています。
有望なベンチャー企業100社が選出される「すごいベンチャー100」に2021年に選ばれるなど、地域資源の有効活用と食品ロスの削減によって、地方創生に貢献する企業として注目されています。
まとめ
地方創生は、地域独自の魅力を最大限に引き出し、持続可能な社会を築くための重要な取り組みです。
その中でも、地方創生ベンチャーは独自のビジネスモデルによって、社会にイノベーションをもたらす存在として期待されています。
ベンチャー企業で働くことで、自分のスキルや能力を活かして社会貢献できるだけでなく、新しい挑戦に取り組む中でより大きく成長することができるでしょう。
また、地方創生に取り組む企業は数多く存在し、事業の幅も広いため、転職する場合にはその特徴をしっかり調べることも大切です。
地方創生に興味のある人は、ぜひ本コラムを参考にして、自分に合った企業を見つけてみてください。