ベンチャーの起業で失敗する確率は?

ベンチャー企業を起業する際、無視できないのが失敗するリスクです。
巷では9割が失敗するとも言われていますが、実際には約4割との調査結果が報告されています。

そこで今回は、ベンチャーの起業で失敗する確率、主な原因、挫折する人の特徴などリスクヘッジに役立つ情報をまとめてみました。

成功させるポイントについても解説していますので、ベンチャーの起業を検討されている人は、ぜひ参考にしてください。

起業の失敗確率は?

ベンチャーとして起業を検討している方にとって、やはり気になるのは失敗する確率なのではないでしょうか。

そこでこの章では、起業に失敗する確率について知っておくべき2つ情報をご紹介していきます。

  • 5年存続率は8割にものぼる!
  • 脱サラ起業で失敗する確率は約40%!

では早速、順番に見ていきましょう。

5年存続率は8割にものぼる!

巷では「起業の9割は失敗する」とも言われていますが、この風評は事実ではありません。
その根拠となっているのが、中小企業白書(2017年度版)に掲載されている以下のグラフです。


出典:中小企業白書(2017年度版)

日本における起業後の5年生存率は実に81.7%にものぼり、主要先進国の中でも群を抜いて高いのです。

上記の調査結果から起業後に失敗する確率を算出すると、以下の通りとなります。

  • 1年後:4.7%
  • 2年後:8.5%
  • 3年後:11.9%
  • 4年後:15.2%
  • 5年後:18.3%

ただし、中小企業白書の統計は「帝国データバンクに企業情報が収録されている企業」のみが対象になっているため、すべての零細企業が含まれている訳ではありません。

国内で起業したすべての企業を対象にすると多少の誤差は生じるでしょうが、少なくとも「起業の9割は失敗する」という説は誤った風評と言ってよいでしょう。

ちなみに、中小企業白書の2022年度版によると、国内企業の廃業率はわずか3.3%という結果でした。

脱サラ起業で失敗する確率は約40%!

中小企業白書の統計結果を見て、「ベンチャー起業は高確率で成功する!」と決めつけるのは早計です。

まずは、ノマドマーケティング株式会社が2021年に全国規模で実施した、脱サラ起業に関する市場調査の結果をご覧ください。


出典:ノマドマーケティング株式会社

同調査は、25歳~59歳のビジネスマン1.000名を対象に行われ、「脱サラ起業をしたことがある」と回答した人の内、失敗した確率は男性が41%、女性が42%となっており、どちらも約4割が挫折を味わっているのです。

これらの数値から、ベンチャーとして起業するには事前に入念な準備が必要だと断言できます。

ベンチャーの起業に失敗する理由3つ

ベンチャーとして生き残るには、起業する前によくある失敗談から「原因」と「対策」を学んでおくことが重要です。

そこでここからは、ベンチャーにありがちな起業に失敗する3つの理由について解説していきます。

  • 集客力や営業力を疎かにしている
  • 放漫経営による運転資金のショート(黒字倒産)
  • 経営陣の不仲

集客力や営業力を疎かにしている

1つめの失敗要因は、商品やサービスの開発ばかりに注力するあまり、肝心の集客力や営業力を疎かにしているケースです。

どんなに優れたビジネスモデルでも、商材の認知度を上げて売上に繋げなければ、収益は得られません。

商品開発費・人件費・広告宣伝費などがかさむ一方で売上が伸びなければ、あっという間に資金が枯渇してしまいます。

ベンチャーとして起業するなら、以下のような対策を講じて集客力や営業力を強化しておきましょう。

  • マーケティング専門の部署を設ける
  • トップセールスマンをスカウトする
  • β版(試作版)を提供して見込み客を増やす

放漫経営による運転資金のショート(黒字倒産)

ベンチャー企業が失敗する2つめの原因は、放漫経営による運転資金のショート(黒字倒産)です。

黒字倒産とは、帳簿上は収入が支出を上回っていて十分な利益が出ているにもかかわらず、運転資金が不足して倒産する現象を指します。

以下のように、無計画な資金管理によって運転資金(手元の現金)が足りなくなることが、黒字倒産の主な原因です。

  • 売掛金の回収が滞る
  • イレギュラーな商品開発費を承認する
  • ムリな設備投資を行う

とくにありがちなのが、売掛金の回収が間に合わず、仕入れや設備投資といった買掛金の支払い期日を迎えてしまうケースです。

入金日と支払日のスケジュール管理を徹底し、「すぐに動かせる一定の現金」を常に手元に確保しておかなければなりません。

経営陣の不仲

ベンチャー企業が失敗する原因として見落としがちなのが、経営陣の不仲です。

ベンチャー企業の多くは、友人や元同僚といった仲間同士が創立メンバーとして名を連ねています。

しかし、以下のような要因がきっかけとなり、良好な関係性が簡単に瓦解したベンチャー企業も多いのです。

  • 責任の所在があやふやになっている
  • 役職の決め方が曖昧になっている
  • 収益の分配が不公平になっている

また、ビジネスが拡大するにつれて「方向性の違い」によって溝が深まり、替えの効かない重要なメンバーが顧客を引き抜く形で独立することもあるでしょう。

「権力」や「お金」を巡るトラブルは組織を一気に崩壊させるほどの影響力を持っているため、会社としてのルールを早期に構築しておく必要があります。

ベンチャーの起業に失敗する人の特徴5選!

ベンチャーの起業に失敗する人にはいくつかの共通点がありますが、とくに多いのが以下のような特徴です。

  • 資金計画が立てられない人
  • マーケティングの視点が欠如している人
  • 起業自体が目的になっている人
  • 思い込みが激しく他者の意見を聞かない人
  • 他人の意見に流されやすい人

資金計画が立てられない人

ベンチャーを起業後に失敗する人は、往々にして資金計画が甘い傾向がみられます。
資金計画が苦手な人が起業すると、早い段階で資金不足に陥って経営が破綻し兼ねません。

資金計画は大きく起業時の「初期投資」と起業後の「運転資金」に分けられますが、とくに多いのが立ち上げ時の資金調達にばかり気を取られ、運転資金を見据えていないケースです。

運転資金の不足は黒字倒産に直結するため、あらかじめ立ち上げ時の資金調達に運転資金も含めておく必要があります。

運転資金は1年間分を確保しておくのが望ましく、家賃・給料・材料費といった支出から想定して算出しておきましょう。

マーケティングの視点が欠如している人

ベンチャー企業とは、新しい取り組みに挑戦している企業を指します。

そのため、まだ世の中に存在しない商品やサービスを探求するあまり、ビジネスで最も重要なマーケティング、つまり「消費者ニーズの探求」が疎かになりがちなのです。

消費者が抱えている課題を解決できるサービスや商品は需要が高く、ニーズが長続きします。
反対に、消費者のニーズを無視して開発されたサービスや商品は、自己満足に過ぎません。

まずは、消費者が何を求めているのか、どのような課題を解決したがっているのかを突き止めてから、提供するサービスや商品を絞り込みましょう。

起業自体が目的になっている人

起業しただけで満足してしまうのも、よくある失敗事例です。

成功しているベンチャー企業の創設者は、確固たる意思の元「成し遂げたいゴール」が定まっており、何より「明確かつ長期的なビジョン」を持っています。

反対に、会社を辞めたくて脱サラ起業した人などは、会社を立ち上げた時点で目的が達成するため、短期で挫折する確率が非常に高いのです。

起業とは、あくまで成し遂げたいことを実現するための手段に過ぎないことを、理解しておきましょう。

ベンチャー企業のビジョンについては以下の記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご一読ください。


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思い込みが激しく他者の意見を聞かない人

思い込みが激しく他者の意見を聞かないのも、起業後に失敗する人の代表的な共通点です。

頑なに自身のアイディアに固執していると、市場ニーズの変化についていけず、需要のないサービスや商品を提供しつづけて赤字が雪だるま式に増えてしまいます。

いわゆるワンマン経営が、その最たる例でしょう。

自身のビジネス感覚を信じるのは起業家として必要な要素ではあるものの、マーケティングによるファクトデータやパートナーの意見、実績が豊富なコンサルタントのアドバイスなどに耳を傾けることで、より視野が広まる分リスクヘッジに繋がります。

他人の意見に流されやすい人

一方、他人の意見に流されやすいのも、失敗する人によくある特徴です。

たしかに他人の意見に耳を傾けることは失敗リスクの軽減につながりますが、だからと言って単純に成功している企業の真似をするのも、失敗する要因になります。

とくに新しい取り組みを行うベンチャー企業ではオリジナルの商材を扱っているため、宣伝方法1つとっても他社と同じ施策が通用するとは限らないのです。

あくまで自社商品にはどのようなPR方法が適しているのか、データドリブンな「答え」を探しましょう。

ベンチャーで起業を成功させる6つポイント

この章では、ベンチャーで起業を成功させる7つポイントについて解説していきます。

  • 支援講座などで専門家に相談する
  • 副業や週末起業から始める
  • 既存のベンチャーで経験を積んでおく
  • ニーズの高い市場を選ぶ
  • 社会・市場の変化に対応する
  • 社内の人間関係を疎かにしない

支援講座などで専門家に相談する

中小企業庁が公開している2017年版「小規模企業白書」によると、起業家が起業する際に利用したかった支援について、以下のような調査結果が報告されています。


出典:2017年版「小規模企業白書」|中小企業庁

上記の通り、「起業・経営支援講座等」は男性起業家の36.4%に、女性起業家の27.3%に選ばれており、多くの方が専門家の意見をきくべきだったと回答していました。

起業家のコミュニティは、似たような立場の人が意見交換をしたり人脈を広げたりするには有効ですが、核心的な回答を得るには物足りないのも事実です。

ベンチャー企業を起業するために準備しているなら、むしろ起業コンサルタントや税理士といった専門家にアドバイスを求めた方がよいでしょう。

副業や週末起業から始める

前哨戦として、副業や週末起業から始めるのも失敗を回避する有効な手段です。
副業や週末起業から始めることで、以下のような「検証」が可能になります。

  • ビジネスモデルの問題点が洗い出せる
  • 問題点ごとに、どの対策が有効なのか試せる
  • 顧客や見込み客の獲得を進めておくことができる
  • 売上の規模が見通せる

会社を辞職するなど、最初から退路を断って起業するのではなく、数か月間の副業や週末起業を経て、売上の見通しが立つと確信が持ててから本格的に始動した方が安全です。

既存のベンチャーで経験を積んでおく

既存のベンチャーで経験を積んでから起業するのも、成功率を上げる効果的な手段です。
ベンチャー企業で培った経験やノウハウは、起業後の大きな武器になります。

大手よりも若手に裁量権を与える風土があるベンチャー企業では、キャリアアップのスピードが速く、短期間で多くの経験が積めるからです。

何より、新しいプロジェクトの立ち上げから軌道に乗せるまでの流れ、さらに収支について学べるのは、大手では不可能と言って良いでしょう。

当サイトでは厳選した優良ベンチャー企業をご紹介しています。
ベンチャー企業への転職を検討される際は、ぜひ参考にしてください。


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ニーズの高い市場を選ぶ

ベンチャー企業として成功するには、ニーズの高い市場を見極める必要があります。

どんなにシステム的に優れたビジネスモデルでも、消費者ニーズが低ければ大きな成果に繋げるのは困難です。

たしかに、ニッチな業界で勝負するという方法で成功しているケースもありますが、小さな市場を独占するよりも、より裾野を広げたビジネス展開の方が成功する確率は高いのです。

社会・市場の変化に対応する

社会情勢や市場は日々変化するため、この流れに対応できずに廃業したベンチャー企業も少なくありません。

一昔前に主流だったレンタルDVDがサブスクへと移行しているように、たとえ一時代を築いたビジネスモデルでもニーズの低下と共に廃れていきます。

起業時の強みにこだわり過ぎるのは、企業の寿命を縮める行為と言っても過言ではありません。

新しいビジネスを開拓するベンチャー企業だからこそ、ビジネスモデルや業務フローを「常に変化させること」こそが、企業を延命させるコツなのです。

社内の人間関係を疎かにしない

「ベンチャーの起業に失敗する理由」の章でも解説した通り、社内の人間関係を疎かにするのは、少数精鋭の組織にとって致命傷です。

創業メンバーに限らず、雇用しているスタッフと良好な関係性が継続できなければ、みすみす優秀な人材を失い兼ねません。

若手と上司の垣根を取り払い、ざっくばらんに意見を交換できる場を設ける工夫が必要です。

まとめ

「失敗から学べ」という格言がある通り、ベンチャー企業の失敗事例には、成功へのヒントが多分に含まれています。

たしかに、ベンチャーの起業で失敗する要因はいくつかありますが、いずれも事前の対策次第で予防することが可能です。

その中でも、ベンチャー企業でまずは経験を積むことは大切です。

9割が失敗するという風評は誇張ではあるものの、約4割のベンチャー企業が撤退を余儀なくされた、という統計結果があるのも無視できません。

ベンチャー企業の起業を検討されている方は、ぜひご紹介した情報を参考に、万全の準備を心がけてください。