ベンチャー商社とは?おすすめの商社系ベンチャー企業をご紹介

ベンチャー企業にはさまざまな業種がありますが、なかでも注目度を増しているのが「商社系」のベンチャー企業です。

今回は、商社系ベンチャーを3つの種類に分けて、おすすめの会社をご紹介していきます。

ベンチャー企業への転職を希望されている方は、ぜひ参考にしてください。

そもそも商社とは?

商社とは、平たく言うと「国を跨いで売買取引を行う会社」のことです。

商社を大きく分類すると、以下の2種類に分けられます。

  • 総合商社:幅広い商材を扱っており、住友商事や三菱商事などが該当
  • 専門商社:食品や医療など、特定の分野に特化した商品を扱っている

ただし、専門商社だからといって1つの分野だけを扱っているとは限らず、副次的な商品を輸出入しているケースも珍しくありません。

また、後述する「商社系ベンチャー企業」の多くは、専門商社に該当します。

ベンチャー商社とは?

結論から言うと、ベンチャー商社とはここ数年で生まれた新しい造語なため、解釈がさまざまで明確な定義はありません。

ただし、転職業界に身を置いていた筆者の見解では、主に以下3種類がベンチャー商社と呼ばれています。

  • ベンチャー企業を支援している商社
  • 社内ベンチャー制度を設けている商社
  • 大手商社にはできないことをしている商社系ベンチャー企業

なお、ベンチャー企業の特徴については以下の記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご一読ください。


▼関連コラム

ベンチャー企業を支援している商社4選!

この章では、ベンチャー企業を支援している商社をご紹介していきます。

  • 三井物産
  • 伊藤忠商事
  • 住友商事
  • 三菱商事

三井物産

最初にご紹介するベンチャー企業を支援している商社は、日本の4大商に数えられる社三井物産株式会社です。

2004年に三井物産100%出資のコーポレート・ベンチャーキャピタル、MGI(三井物産グローバル投資株式会社)を設立。
日本国内はもちろんシリコンバレー・北京・ムンバイなどに拠点を構え、世界各国のベンチャー企業を支援しています。

また、2017年度の中期経営計画では成長分野の1つに「ヘルスケア領域」を定め、とくに以下のようなスタートアップ投資に尽力しています。

  • 医療×ITの「メドテック」
  • ヘルス×ITの「ヘルステック」

伊藤忠商事

伊藤忠商事株式会社もベンチャー企業を支援している総合商社の1つです。

とくにIT系のスタートアップやベンチャー企業への投資を積極的実施。
すでに1970年代からシリコンバレーに進出するなど、国内のみならず海外企業への投資活動も盛んに行っています。

国内では2016年に飲食店予約アプリを開発・提供している株式会社トレタに出資し、大きな話題となりました。

ちなみに、同社は「伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社」というベンチャー企業を対象にした投資会社を立ち上げており、2019年にはAIを活用した自動野菜収穫ロボットを開発している「inaho株式会社」への投資を行っています。

住友商事

続いてご紹介するベンチャー企業を支援している商社は、住友商事株式会社です。

2022年にコーポレート・ベンチャーキャピタルとして「住商ベンチャー・パートナーズ株式会社」を設立し、以下3つの分野を中心に積極的な出資を行っています。

  • テクノロジー×イノベーション
  • ヘルスケア
  • 社会インフラ

ちなみに、以下は住商ベンチャー・パートナーズ株式会社が2024年度に出資したベンチャー企業の一例です。

  • 経営管理SaaSを提供している「株式会社 ログラス」
  • 水を推進剤として用いた小型衛星用推進機を開発した「株式会社 Pale Blue」
  • 臨床試験の業務効率化プラットフォームシステム事業を展開する「株式会社Buzzreach」
  • VTuberなどのIP事業を展開する「株式会社Brave group」

三菱商事

国内屈指の総合商社である三菱商事も、ベンチャー企業支援を行っています。

2016年5月には、シリコンバレーの先端企業に的を絞って成長資金投資を行う「Geodesic Capital Fund I」という335百万米ドル規模の新ファンドを立ち上げに成功。

IT・ライフサイエンス・新興企業への顧問業務を担っている大手法律事務所の元CEOであり元米国大使としても知られる「ジョン・ルース氏」や、米国大手ベンチャーキャピタルの元パートナー「アシュビン・バチレディ氏」とタッグを組み、日米ともに大きな話題となりました。

ちなみに、同ファンドはSNSの「snapchat」への投資を行っており、将来的にX(旧Twitter)やInstagramのような国際的なプラットフォームに成長する可能性を秘めています。

社内ベンチャー制度を設けている商社の事例4選!

ここからは、社内ベンチャー制度を設けている商社の事例をご紹介していきます。

伊藤忠商事:イー・ギャランティ

伊藤忠商事は社内ベンチャー制度を設けており、社内カンパニーの子会社として設立されたのが、インターネット取引決済の保証会社「イー・ギャランティ株式会社(eGuarantee)」です。

設立当初、伊藤忠商事入社3年目だった若手社員「江藤公則氏」が代表取締役として立ち上げたニュースは、業界で大いに注目されました。

以下の通り、社内ベンチャー制度によって生み出されたイー・ギャランティ株式会社は順調に事業を拡大し、急成長を遂げています。

  • 2007年:ジャスダックへ上場
  • 2012年:東証一部に指定替え

住友商事:MonotaRO

株式会社MonotaROは、中小企業向けの工場関連資材を扱うECサイトの運営会社です。

同社の前身は、住友商事の社内ベンチャーとして同社の社員だった「瀬戸欣哉氏」が、米国の関節資材販売大手であるグレンジャー社と共同で設立した「住商グレンジャー」で、2006年に商号をMonotaROへと変更しました。

ちなみに、住友商事の鉄鋼部門からキャリアをスタートさせた瀬戸欣哉氏は、社内ベンチャーの創業者として立ち上げを成功させた後、2015年には業界最大手であるLIXILグループの社長に就任しています。

三菱商事:Soup Stock Tokyo

三菱商事は社内ベンチャー制度によって数々の会社を立ち上げていますが、Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)を運営している株式会社スマイルズは、その最初の事例です。

1号店をオープンした1999年当初、三菱商事に社内ベンチャー制度はありませんでした。

しかし、代表取締役を務める「遠山正道氏」が三菱商事社員時代にケンタッキーフライドチキンへ出向したのをきかっけに会社に直談判し、13%を本人が出資する提案が受け入れられて設立に至ったのです。

現在では食べるスープの専門店として不動の地位を獲得するまでに成長を遂げています。

丸紅:セレクトスクエア

丸紅の社内ベンチャー事例としてご紹介するのは、2001年に設立されたファッション系ECサイトを運営している「株式会社セレクトスクエア」です。

総合商社からのスピンオフベンチャーの代表格として知られており、総合商社ならではのノウハウによって人気ブランドの参入を実現し、事業を拡大してきました。

その後、以下の沿革を経て800ブランド・約1万アイテムを扱うまでに成長を遂げています。

  • 2004年:丸紅社員だった属 健太郎氏が事業責任者に着任
  • 2007年:屬 健太郎氏が代表取締役社長に就任し、友好的MBOによって丸紅から独立
  • 2012年:高島屋と資本提携(株式の6割超を高島屋が保有)

商社系ベンチャー企業3選!

この章では、商社系ベンチャー企業として起業した3社をご紹介していきます。

  • G.U.サプライヤーズ株式会社
  • Space BD株式会社
  • 株式会社ファーマーズ・フォレスト

G.U.サプライヤーズ株式会社

最初にご紹介する商社系ベンチャー企業は、「媚びない商社」をコンセプトに掲げているG.U.サプライヤーズ株式会社です。

1997年7月に設立された大阪の商社系ベンチャー企業で、外国産畜産物の輸入を手掛けています。

また、日本の食文化を世界に発信する輸出事業、さらには食料品の高騰リスクに備えたコンサルティング業務なども行っており、積極的に事業を拡大しているのが強みです。

Space BD株式会社

続いてご紹介する商社系ベンチャー企業は、「宇宙事業の専門商社」という希少性の高さが魅力のSpace BD 株式会社です。

具体的には以下のような事業を手掛けており、世界に通用する日本初のメガベンチャーを目指しています。

  • 衛星打上げ事業
  • 国際宇宙ステーション利用事業
  • 技術プロジェクトマネジメント
  • 宇宙機器輸出入事業

「ワクワクできる仕事に就きたい!」という理由でベンチャー企業への就職を希望している人にとっては、まさに唯一無二の存在と言って良いでしょう。

なお、Space BD 株式会社は2017年9月1日に設立した東京のベンチャー企業で、地域産業振興事業なども手掛けています。

株式会社ファーマーズ・フォレスト

最後にご紹介する商社系ベンチャー企業は、「日本のローカルをワールドクラスにする地域商社」をコンセプトに掲げている、株式会社ファーマーズ・フォレストです。

地域をまるごと売り込む専門商社だけあって、道の駅に出店している農作物の売り場を運営したり、農業体験をオプショナルツアーとして提供したり、インバウンド向けの事業に強みを持っています。

2007年に設立された株式会社ファーマーズ・フォレストは、地域にコミットした専門商社です。

そのため、東京本社以外にも沖縄や福島などに拠点を構えており、地元のベンチャー企業に転職を希望する方にとっては有力な候補となるでしょう。

ベンチャー商社のなかでも狙い目は「商社系ベンチャー」

この記事では、ベンチャー商社について特集してきました。

ベンチャー商社には、「ベンチャー企業を支援している商社」「社内ベンチャー制度を設けている商社」「商社系ベンチャーとして起業した会社」の3種類があります。

大手総合商社が母体になっている商社に就職・転職ができる人は、ほんの一握りです。

この点を踏まえると、商社系ベンチャーとして起業した会社に的を絞るのが現実的と言えるでしょう。

商社系ベンチャー企業への転職を目指す際は、ぜひ本記事でご紹介した情報をお役立てください。